化学系就活弱者のための就活

19卒の国立大化学系大学院生が新卒就活について思うことを書いていきたいと思います。就活強者ではなく、就活弱者の立場から書いていくつもりです。

研究概要は専門外の理系に見てもらえ

多くの企業はESの提出とともにA4 1~2枚の研究概要の提出を求められるでしょう。どのように書けばいいのかわからない人も多いかもしれません。中には学会発表で事前に提出する要旨と同じように書けばいいと思っている人もいるかもしれません。しかし、それでは限られた時間の中で効果的に自分の研究をESを見る人事や面接官に伝えることがなかなかできないことがあります。学会で提出する要旨はある程度類似した研究をしている研究者やその研究に興味のある研究者はじっくりと読むことが多いですが、研究概要はむしろ知識がある人が読むことはまれである上にESと同様に大量の研究概要を限られた時間で処理しなければならないことが多いです。つまり、研究概要は専門家によるディスカッションを前提とするのではなく、専門知識がなくても短時間で自分の研究の良さがわかるようすることを前提にして書く必要があります。したがって、学会で使った要旨がそのまま就活の研究概要に使えることはまれであり、短時間で専門知識がない人でもわかりやすいように書き換える必要があると言えます。
続いてどのようにしてわかりやすい研究概要を書くかについて説明していきたいと思います。まず、研究の背景を丁寧に書きましょう。どういう製品に応用できる技術なのか、さらにそれらの製品の課題はどういうところにあり、自分の取り扱っている技術はその課題に対してどのようにアプローチできるのか、それに加え、その技術の先行研究における課題とその課題に対して自分の研究はどのようにアプローチしているかを説明していく必要があります。どういった課題が存在しており、それに対してどのようにしてアプローチしているかを掘り下げて書き、製品と自分の取り扱っている技術、自分の研究の目標の関係性が明らかになるようにする必要があります。続いて実験方法に関しては数行でかまいません。これは学会などの要旨と同じような感じでいいでしょう。ただ、自分の取り扱っている技術の具体的なイメージがわくようにわかりやすく書き、必要に応じて図なども入れていいと思います。最後に結果と考察について説明していきたいです。ここで気を付けたいのが、自分が考えて実行した手段によって先行研究や類似の研究と比べてどのような変化が見られたか、なぜ、その手段によって変化が起こったのかがわかるように説明することを意識して書くことです。ここに関しては研究の背景で述べた関係性と一貫性があるように書いていく必要があります。企業の方は必ずしも優れた研究成果を求めているわけではなく、自分の研究課題に対して自分でどのように考えて、どのようにアプローチしたのかを見ています。また、文章で長く説明するよりも図やグラフなどを多めに入れて感覚的にわかるようにするといいと思います。
また、研究概要を書き終わったら専門外の研究を行っている人に見てもらいましょう。研究室の先輩や指導教員といった自分のテーマをよく知っている人には企業の専門外の人の目線で研究概要を見ることができないからです。どのような研究室であってもその研究室の中では当たり前すぎて常識になっているけれど、専門外の方にとってはかなり理解しにくいことが多くあると思います。同じ専門の人が見るとそういったところを見落としてしまうことがありますが、専門外の人が見ればほぼ確実に引っかかって指摘するでしょう。この専門外の人が引っかかる場所をわかるように修正することによって研究概要はわかりやすくなり、評価の高い研究概要に完成するでしょう。ただし、一部の企業は専門の担当者が見るので専門外の言葉を使ってもよいといったような趣旨の注を入れていることがあります。その時は学会と同じような研究概要の書き方をすべきです。
面接時に研究内容を説明する場合も異本的には研究概要の時と同様にできるだけわかりやすく伝わりやすいようにする必要があります。これは人事が担当する一次面接や部長や課長といった現場の責任者が担当する二次面接、役員が担当する最終面接いずれの場合においても基本的には同じです。どういう製品に応用する技術なのかから始まり、一般的に用いられている技術と比較して研究室で扱っている技術はどのように優れているかを説明し、続いて自分の研究は研究室での先行研究のどこの課題を解決するのかといった流れをまず示します。研究室での先行研究の課題に対して自分がどのようにアプローチし、その結果、何が減られたのかを端的に示しましょう。この流れは研究概要の書き方と同じです。ただし、特に二次面接において学会の時の様な深堀をしてくる時がありますが、この時は学会でのプレゼンや質疑と同じように厳密に深くまで伝えるようにしましょう。
また、取り扱っている技術の原理などが口頭だけでは説明しにくい場合はパワーポイントやイラストレーターなどで図を描いて印刷したものを持参して説明するといいです。筆者の研究においてカギとなる技術は図を用いて説明しないとなかなかわかりにくいので、この方法は有効でした。
まとめとしてはできるだけ専門外の人にもわかりやすいように工夫して書き、何度も専門外の人に見てもらい修正していくことが評価の高い研究概要の作製において必要です。